タイは、タイ族最初の王朝とされるスコータイ王朝以来王政が続き、現在のチャクリー王朝は4つ目の王朝になる。タイ王国の現行憲法は、国王について「尊敬し崇拝すべき地位」(第8条)と定めており、国民の精神的な支柱であると同時に、「タイ軍の総帥」(第9条)として国軍の最高司令官であり、「仏教徒であり且つ宗教の保護者」(第10条)として仏教界の頂点に立つ存在でもある。国王はその行為に関して無答責で、「何人も問い詰めたり告訴する事は出来ない」(第8条)とも規定されている。2016年10月にプミポン国王(ラーマ9世)が死去した後、長男のワチラロンコン皇太子が第10代となる新国王、ラーマ10世に就任した(→「プミポン国王死去」)。前国王は全国で「王室プロジェクト」と呼ばれる農村振興プログラムを展開。1992年に起きた軍と民主化運動との流血の対立では、両陣営の指導者を呼びつけ沈静化させるなど、王室の権威を高めてカリスマ的な存在となっていたが、新国王は、新憲法(→「タイ新憲法」)の草案段階で国王や王室の権限を強めるよう異例の注文をつけるなど、前国王とは異なるスタイルのようだ。新国王がタイ国民との信頼関係をどう築き、「国父」としての存在感をどう発揮するのか注目されている。