2011年9月、マンモハン・シン首相はインドの首脳として12年ぶりにバングラデシュを訪問し、10億ドルのインフラ向け借款供与、両国間の飛び地の交換を含む国境問題の解決などに合意し、前年1月のハシナ首相による訪印を契機とする両国関係の緊密化をさらに推し進めた。バングラデシュの独立には、インドの軍事介入が決定的な役割を果たしたにもかかわらず、その後の軍人政権がパキスタンや中国との関係を重視してきたため、両国関係は必ずしも良好とはいえなかった。08年末のバングラデシュ総選挙でアワミ連盟が圧倒的な勝利を収め、インドとの関係を重視するハシナ政権が安定的な基盤を獲得したことで、両国関係はおおきく改善された。今回の両国間の共同声明では、借款や国境問題のほか、バングラデシュがネパールおよびブータンと、インドが西ベンガル州と東北インドの諸州とを結ぶ物資輸送のために、相互の国土を通過できる、いわゆる「トランジット」の便宜も、部分的だが相互に供与された。国境を越えた両国間の輸送網の整備は、隣接するミャンマーを通じてASEAN地域との連結性を将来的にたかめる前提としても期待されている。