インドは1947年の独立の翌年には、早くも原子力法を制定して原子力開発にのりだした。50年代にはイギリスやカナダからの研究・実験用原子炉、アメリカからのプルトニウムの再処理技術などの提供をうけ、56年には国家的な原子力発電炉開発計画を策定した。60年代にはアメリカから沸騰水型軽水炉、カナダから重水炉(CANDU)を導入したが、70年代以降はカナダ型重水炉を原型に開発した国産原子炉による発電事業が定着した。加圧水型重水炉は天然ウランを燃料にできるため、高度なウラン濃縮技術をもたないインドには適している。74年と98年の核実験では、これら施設から生産、再処理されたプルトニウムが使用された。74年の核実験後に停止されていた英米などからの技術協力、燃料供給は、印米原子力協定と国際原子力機関(IAEA)によるインドへの特例的査察制度によって2009年に再開された。この査察制度のもとでは、現存する20基の発電用原子炉のうち14基のみが査察下におかれる。査察外の6基(タラプール、カイガ、マドラスの各2基)では軍事目的のプルトニウムを生産する可能性が残されている。11年には100発に近い核弾頭が貯蔵されているものと推定されている。11年現在、合計発電能力478万キロワットの20基の発電用原子炉が全電力の3.7%あまりをまかなっている。急増するエネルギー需要に対応するために、12年現在、稼働をめぐって住民の激しい抵抗が続いているインド南端クダンクラムの加圧水型軽水炉(ロシア提供)をはじめ、7基が建設中である。さらに40基あまりが計画段階にある。