2016年11月8日、インドのナレンドラ・モディ首相(→「モディ政権」)がテレビを通じて突然発表した500ルピーと1000ルピー紙幣の流通停止措置。この2種の紙幣は、「高額紙幣」とされるものの、紙幣流通総額の86%を占めるとも言われ、特に500ルピー札などは庶民にとっても日常生活に不可欠の紙幣とされる。また現金依存度の高い中小事業所、商業、農業部門は、日常の取引や賃金支払いをはじめ、基本的な経済活動にすら支障が生まれている。モディ首相は、この措置が統計に現れないブラックマネーの無効化、脱税や資金洗浄、不正蓄財、紙幣偽造などの抑止、テロ組織や犯罪組織などの資金源の遮断を目指したものだと説明したが、金融専門家の多くは、隠匿資産の9割以上は紙幣以外の不動産や金などの貴金属、宝石などの資産に転換されていると指摘し、効果が疑わしいうえに、必要以上の犠牲を一般国民に強いていると批判している。また流通停止措置が宣言されてから1か月ほどの間に、モディ首相による今回の措置の理由づけが大きく変化し、現金経済から「キャッシュレス経済」への転換が目的であるかのような説明が繰り返しなされている。新紙幣への全面的交換は17年半ばまでかかるとされ、次年度にかけて0.5~1%前後の経済成長率低下が危惧されている。