2014年4~5月の第16次連邦下院選挙(総選挙)で成立したインド人民党のナレンドラ・モディを首班とする政権。第16次総選挙でインド人民党は、下院(545議席)の単独過半数となる282議席を獲得した。1989年の第9次総選挙でのインド国民会議派の後退以降、下院では単独過半数を占める与党が存在せず、連合政治の時代が続いた。インド人民党は、形としては現在10の地域政党と連合(国民民主連合 NDA)を組んでいるが、実態は単独政権である。また政権の中では、首相候補として選挙戦の顔となったモディ新首相の発言力が圧倒的に強く、首相府を中心とする集権的な指導体制がとられている。モディ首相には二つの顔がある。第一の顔は、2001年以来インド西部の工業先進州グジャラート州の首相として、企業誘致を積極的に進め、マハーラーシュトラ州に並ぶ主要工業州としての地位を固めた成長論者としての顔である。第二の顔は、ヒンドゥー至上主義団体である民族義勇団の幹部として、02年に同州で発生したイスラム教徒虐殺暴動を容認し、イスラム教徒へのヘイトスピーチを繰り返した右派政治家としての顔である。選挙戦では、第一の顔を前面に立てて、会議派政権下の汚職や成長の鈍化に不満を持つ世論を味方につけた。14年5月の首相就任以降、政権は内外企業の投資を促進するために、労働法改正や工業用地取得手続きの簡素化などを急いでいる。しかし、第二の顔を共有する民族義勇団やその傘下団体は、インド人民党の大勝に勢いをえて、国粋主義的な教育の推進、イスラム教徒やキリスト教徒のヒンドゥー教徒への再改宗運動など、ヒンドゥー至上主義的な活動を強めている。モディ首相自身は、こうした活動についての態度表明を避けている。