2010年6月に発足した、ジュリア・ギラード(就任時48歳)が率いるオーストラリアの労働党政権。ギラード首相は前ラッド政権の副首相であった。ラッド首相が力を入れ08年12月に発表した地球温暖化対策は、温室効果ガス削減目標が低い(00年比で20年までに5%)として緑の党から批判を浴び、09年12月に温室効果ガス排出量取引制度導入関連法案が上院で否決されるまで、高い支持を得ていた。ラッドは、ハワード政権(1996~2007年)の新自由主義経済政策を踏襲する一方で、対アメリカ追随外交を修正し、社会保障・教育・医療政策の修正、移民・難民政策の人道的対応への復帰を行い、2年にわたり高い支持を維持した。しかし10年初めにラッド首相の支持率が急落、党内の党首争いに火がついた。4月にはラッドの支持率は35%まで急降下。ラッドは国民の支持を得るため、日本の調査捕鯨禁止を求めて国際司法裁判所に提訴したり、資源産業への超過利潤税導入を急きょ発表するなどして、政治的混乱を引き起こした。そのため、ギラード副首相がラッドに退任を迫り、6月の党首選を前にラッドは引退、ギラードが初の女性首相(第27代)に就任した。超過利潤税以外はギラード政権も基本政策を踏襲し、就任直後の8月に総選挙を実施、与野党ともに過半数割れとなった。しかし与野党による無所属議員獲得競争には勝利し、第2次ギラード政権が9月に発足した。11年後半に炭素価格制度(通称は炭素税)法案を議会に提出後も支持の低下は続いたため、12年2月には前首相ラッドが指導権争いをおこし両院議員総会が開かれたが、ギラードが勝利し第3次内閣を組織した。炭素税は、12年7月に導入されたが、人気低迷が続き、13年6月にはラッド前首相の挑戦を受け首相を退くとともに政界から引退した。