オーストラリア連邦自由党のマルコム・ターンブル(Malcolm Bligh Turnbull)首相が率いる政権。ターンブル下院議員は、2015年9月の党首選において54対44 (棄権1) でトニー・アボット前党首・連邦首相に勝利し、新党首・第29代連邦首相に就任した。15年になってアボット首相の経済政策や政治指導力への疑問が党内で高まり、首相と与党の支持率が低迷した結果の党首交代である。ターンブル新首相はシドニー大学を卒業後、記者、弁護士、法律事務所執行役員、会長などを歴任。オーストラリア共和国運動(Australian republican movement ; ARM)のリーダーとしても活動し、国民的人気があったため、04年10月の連邦下院総選挙で初当選した。その直後からジョン・ハワード政権、影の政権、アボット政権で閣僚を務め、08~09年には党首となるなど常に党中枢に位置していた。対日外交についてはアボット前首相ほど熱心ではなく、対日中関係の均衡化を目論むとされていたが、15年12月に首相としての初の外遊地に日本を選択。日本の調査捕鯨には批判的ながら、日本との経済関係、対中国戦略的連携の強化を表明している。新自由主義経済政策を堅持しつつも、リベラルな観点から環境政策、福祉政策、社会的マイノリティー政策ではより積極的である。共和国運動リーダーだったことから、国旗変更や共和国化に加え、英国的伝統の刷新にも積極的とみられ、王党派のアボット首相が14年2月に復活させた「ナイト」「デイム」の称号授与を、15年11月に廃止している。