2007年4月、カナダ政府は、京都議定書に盛り込まれたカナダの温室効果ガスの6%削減という目標が事実上不可能として、別の政策手段を取ると表明した。カナダは京都議定書では12年までに温室効果ガスを6%削減することを義務付けられていたが、これが達成できないと明言したわけである。京都議定書に代わる新しい政策として、20年までに排出量を06年と比べて20%削減するとした。ただしこれでも京都議定書の目標を達成することはできず、この国際的な枠組みからカナダが離脱したことを意味している。背景にはハーパー政権の基盤が西部カナダ、とくに石油産出で知られるアルバータ州にあり、厳しい環境対策が石油産業にマイナスの要因を及ぼすためと指摘されている。しかし上院でその当時には過半数を握っていた自由党は、京都議定書をハーパーの連邦政府に尊重させる法案を07年6月に提出した。今後、カナダ政府が京都議定書の枠組みにどのように対応するか、注目されるところである。さらに11年の連邦総選挙では5番手の政党として緑の党(党首はエリザベス・メイ)が初当選し、環境問題への政治的動きが変化することが期待されている。加えてカナダの州政府でもそれぞれが温暖化対策への熱心な取り組みを表明しており、アメリカの有力な州(例えばカリフォルニア)との連携・協力という動きも出てきている。連邦政府だけでなく、州政府の動向にも注目していきたい。