アメリカ国防総省が中心になって5~10年間の核戦略指針を策定した議会向けの報告書のこと。オバマ政権は2010年4月6日、政権として初の「核態勢の見直し(NPR)」を発表し、自国の核兵器の使用を大幅に制限する新たな指針を示した。「アメリカが核兵器使用を考慮するのは自国や同盟国の死活的利益を守るための極限状況下に限られる」とし、また通常兵器や生物・化学兵器で攻撃された場合も、核拡散防止条約(NPT)を順守する非核国には核攻撃をしないと初めて明記した。ブッシュ前政権下の02年に公表された前回NPRは、「ならず者国家」(→「テロ支援国家」)やテロリストによる大量破壊兵器保有に対応する幅広い能力が必要と指摘していたが、これに対しオバマ大統領は、新NPRに関する声明の中で「安全保障上の最大の脅威はもはや国家間の核攻撃でなく、核テロや核拡散問題こそ切迫した脅威である」と強調した。新NPRには、アメリカが核兵器を保持している目的は自国と同盟国への核攻撃抑止であるとして、原潜に搭載可能な核巡航ミサイル「トマホーク」を退役させることや、今後は核実験をせず包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准に向けて努力することも明記されたが、核兵器の「先制不使用宣言」は見送られた。ゲーツ国防長官は記者会見で新NPRについて「核のない世界という長期目標に向けて、アメリカが核の役割と数をいかに縮小するかを示した」と述べた。