オバマ大統領は2012年1月5日、国防費削減に対応する新国防戦略を発表し、地上戦力の縮小に伴い冷戦後の米軍の根幹となってきた「2正面戦略」を維持しない方針を表明する一方、中国の軍事的脅威が増すアジア太平洋地域の戦力は増強する姿勢を示した。新戦略は「21世紀の国防政策の優先事項」と題し、2020年の米軍の役割と任務を展望、米軍全体の規模を縮小しつつ、アジア太平洋地域を重視した戦略再編を行うとしている。2つの大規模な地域紛争に同時に対処する「2正面戦略」を放棄する代わりに、一つの紛争に対処している間に別の地域で敵が戦争を起こさないよう抑止・屈服させることをめざしており、一つの大規模紛争に集中的に対処する方向性を改めて示した。イラクやアフガニスタンでの戦争が軍事費増大につながった反省から、米軍は地域での大規模で長期的な軍事作戦を前提とした態勢を取らないとし、オバマ大統領は「米軍を機動的かつ柔軟にあらゆる有事に対応できるようにする」と表明した。国防総省は10年2月発表の「4年ごとの国防計画見直し(QDR)」で「2正面戦略」を改める方針を示していた。