カナダの移民制度は1960年代に歴史的にみると大きく転換した。それまでのカナダの移民受け入れはヨーロッパ系の白人移民を受け入れることには熱心であったが、非白人のアジア系移民については拒絶したり、厳しい制限をかけてきた。しかし、第二次世界大戦後、人種差別的な色彩を残す移民制度について反省があり、次第に改善されていった。その第一歩は62年の改革であり、移民受け入れについて制限を加えていた規定が廃止された。ついで第二歩となるのが67年のポイント制度の導入である。これは移民の能力や可能性について、学歴や言語能力、そして職歴などを点数化(ポイント)して、客観的に判定しようとするものである。それまでの主観的でバイアスのかかる判定方式ではなく、教育(20点)、年齢(10点)、言語能力(10点)などの基準を判定し、合計で100点満点のところ、一定の得点を得ると人種や民族、そして出身地域には関係なく受け入れが決まる。これにより、80年代以降にはアジアやアフリカからの移民が増加し、また学歴や職歴の高い移民が増大してきた。その後、判定基準のうち、学歴や言語能力に高いポイントが与えられるなどの微調整が加えられてきた。最近では移民として受け入れられるには100点満点のうち、67点以上を獲得することが必要になってきた。また世界的に移民申請が増加し、未処理の申請が増えるという事態が生まれてきた。時には審査結果を10年間待つことがあるほどに、申請案件が累積してきた。これに対して、ハーパー政権は審査打ち切り(申請料の返金)や特定の職種にある移民だけを受け入れる、という対策でポイント制度を大きく変容させている。