オバマ大統領が最優先課題の一つとして取り組む包括的移民制度改革。不法移民の合法化に道を開く一方、国境警備を強化して新たな不法移民の流入阻止をめざす。オバマ大統領は2014年11月21日、移民制度改革を進める大統領令に署名した。超党派による移民制度改革関連法案が13年6月に上院で可決されたが、野党・共和党が過半数を握る下院では可決のメドが立っていないため、議会の承認を経ずに大統領権限で改革を進める選択をした。大統領令は、条件を満たす不法移民に対し、3年間の期限付きで一時的に強制送還を免除し、労働許可を与えるとしている。対象となるのはアメリカに5年以上居住し、アメリカ国籍や永住権を持つ子供の親。約1100万人にのぼる不法移民のうち半数近い約500万人が救済される。不法移民の人権保護に加え、労働力が不足している産業部門などへの労働力供給といった狙いもある。ホワイトハウスは、国内総生産(GDP)の押し上げ、労働者数の増加など、移民制度改革の経済効果を強調している。これに対し野党・共和党は、治安の悪化や社会保障費の負担増などを理由に反対している。