世界のコカのほとんどはアンデス地域のコロンビア、ペルー、ボリビアで栽培される。アメリカ政府はコカイン撲滅のためには元を断たなければならないという理由から、1989年にアンデス・イニシアチブを決定し、軍隊を動員して枯葉剤散布や焼却によるコカ栽培の一掃を目指してきた。3カ国のうち最大のコカ栽培国であるコロンビアでは、アメリカはコロンビア革命軍(FARC)などの反政府ゲリラがコカ栽培やコカイン取引に関与しているとして、ゲリラ組織制圧のための「コロンビア計画」を進めてきた。その結果、これら3カ国のコカ栽培は最盛期より減少したが、コカに代わる農作物栽培が難しいなどの理由で、栽培地面積は高止まり状態にある。その一方で、枯葉剤散布による農業生産の破壊や健康被害なども起きており、アメリカ主導のコカ栽培一掃政策には反対が強い。ボリビアやペルーでは、コカとコカインとは別物である、コカは栄養価も高く、食品や医薬品として優れた伝統的作物であると考えられている。かつてコカ栽培農民運動の指導者であったボリビアのモラレス大統領は、国内需要の充足に必要なレベルにまで栽培地を漸減していく政策をとっている。