ベネズエラのウーゴ・チャベス・フリーアス大統領を首班とする現政権。ボリバル思想に基づく社会変革を訴え、ラテンアメリカ諸国の指導者として急速に頭角を現している。シモン・ボリバルは19世紀初頭のラテンアメリカ独立運動指導者だが、単にスペインからの独立だけではなく、社会経済改革、下層大衆の復権、ラテンアメリカの連帯と統一による自立的発展を掲げていた。ベネズエラはラテンアメリカ最大の産油国として豊かな国とみられていたが、貧富の格差は激しく、とくに1980年代以来の新自由主義経済化により矛盾が拡大していた。チャベスは「革命的ボリバル運動」の指導者として92年にクーデターを実行したが、失敗し逮捕された。だが、98年に大統領に当選し(得票率56.5%)、99年2月の就任後、直ちに新憲法を制定して、国名をベネズエラ・ボリバル共和国に改めた。また、識字運動や土地改革などの社会改革、80年代以来、事実上民営企業化していたベネズエラ石油公社(PDVSA)の再建などに取り組んだ。しかし、反対派のPDVSAの経営者や石油労働者組合が長期ストライキに入り、2002年4月には軍の一部がクーデターを起こしてチャベス大統領を拘束、経営者連合FEDECAMARAのペドロ・カルモナを大統領に任命した。これに対し、チャベス派軍人が国民の支持を背景に直ちに反クーデターに立ち上がり、チャベスは大統領に復帰した。このあと、貧困対策や協同組合化を基礎とする中小企業の育成など改革に拍車がかかり、06年の選挙で再選された(得票率62.8%)。チャベス大統領は「21世紀型社会主義」を掲げ、07年12月にはその実現のための憲法改正案を国民投票にかけた。このときには僅差(賛成49.2%、反対50.7%)で否決されたが、09年2月に2度目の国民投票で承認された(賛成55%、反対45%)。新憲法では、大統領の無期限再選、福祉の拡充のための社会安定基金の設立、労働時間短縮、参加民主主義制度の強化、協同組合を中心とする新しい所有形態の導入、天然資源の民営化禁止などが規定されている。なお、12年には大統領選挙が実施される。