チリの保守派「変化のための同盟」のセバスティアン・ピニェラを首班とする政権。2010年1月の選挙(第2次投票)で当選し(得票率51.87%)、同年3月に成立した。「民主主義のための連合」のエドゥアルド・フレイ・ルイス=タグレ候補は小差で敗れた(同48.12%)。ピニェラ大統領はピノチェト軍事政権時代(1973~90年)に財を成した「億万長者」といわれる大企業家である。チリでは90年の民政移管以来、中道派の政党連合「民主主義のための連合」政権が4代にわたり続いてきた。したがって、ピニェラ政権は民政移管後、初の保守派・親ピノチェト軍政派の政権となる。チリではピノチェト軍事政権末期に完璧な新自由主義経済体制のもとで高度経済成長が始まり、民政移管後も続いているが、その一方で、世界最大といわれる所得格差の拡大、非正規雇用や貧困ボーダーライン層の膨張、失業率の高止まりなどの矛盾が出ている。2010年8~10月のチリ北部コピアポのサンホセ鉱山落盤事故救出劇を機に、世論調査での大統領支持率は上昇したが、11年に入り、教育の民営化に反対する高校生の集会やデモ、ハンガーストライキが起き、これに労働組合も加わって、新自由主義政策の転換を求める運動が激化している。これに対し政府は武装警察により鎮圧している。