ボリビアのフアン・エボ・モラレス・アイマ大統領を首班とする政権。ボリビアは世界の最貧国の一つで、先住民族が人口の半数以上を占める。モラレスは同国史上初の先住民大統領である。貧農出身であり、父親はケチュア族、母親はアイマラ族、母語はアイマラ語。中部地方チャパレのコカ栽培農民運動の指導者として頭角を現し、1997年に国会議員に当選、99年に「社会主義への運動」(MAS)を創立して2005年12月の大統領選挙に出馬し、初当選を果たした(得票率54%。06年1月就任)。さらに09年12月に再選された(同64%。10年1月就任)。先住民族の復権を最大の課題の一つに掲げるが、「伝統社会」の復活ではなく、その「良い面」を生かしながら、新自由主義体制下で矛盾が深刻化した「ボリビアの立て直し」を目指す。第1次政権では下層大衆への福祉政策充実、天然ガス国有化法(06年5月)、遊休地や生産性の低い大農場の接収を規定した農地改革法修正法(同年10月)などを実施した。09年2月には新憲法が制定され、ボリビアはさまざまな先住民族や混血などからなる「複数民族国家」と規定され、国名が「ボリビア多民族国」に変更された。また、すべての国民の平等な権利、先住民族の自治権、国家の経済介入、外国軍基地の禁止などもうたわれた。これに対し先住民人口が少なく、石油や天然ガス、輸出向け農産物の生産が発展したサンタクルス、タリハ、パンド、ベニの東部4県(いわゆる半月地帯)は自治を求めるなど激しく抵抗した。そのため新憲法には地方自治の確立が規定されたが、天然資源の管轄権は国家に所属するものとされた。なお、ボリビアはチリとの間で行われた太平洋戦争(1879~84年)の敗北により太平洋岸の国土を失っており、経済発展の実現のためにもチリとの交渉による「海への出口」の確保も重要な課題となっている。