ブラジルの前政権(2003年1月~10年12月)。ルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバはブラジル東北部の貧しい農民の出身だが、軍事政権時代(1964~85年)に労働運動の指導者となり、労働者党(PT ; Partido dos Trabalhadores ポルトガル)を創立した。民政移管後の2002年に4度目の挑戦で大統領に当選し、06年にも再選を果たした。ルラ大統領は労働党右派に属する。経済政策においては前政権までの新自由主義政策を踏襲し、世界一の輸出額を誇るバイオエタノール、石油などの豊かな自然資源、農産物、重化学工業製品の輸出拡大を背景に、高い経済成長を実現した。こうした経済力を背景に、ラテンアメリカ主導の地域経済統合を推進するとともに、国内ではボルサ・ファミリア(貧困家庭への金銭的補助)や最低賃金の引き上げなど貧困層対策を実施した。なお、ブラジルでは大統領の3選は憲法で禁止されている。