アルゼンチンのクリスティナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領を首班とする現政権。2007年11月の選挙で初当選し(得票率45.3%。同年12月就任)、11年に再選を果たした(得票率54.1%。同年12月就任)。アルゼンチン史上、選挙で選ばれた初の女性大統領であり、再選を果たした初の女性大統領でもある。フェルナンデスはネストル・キルチネル前大統領(任期03~07年)の夫人であり、同政権期には上院議員を務めていた。キルチネル夫妻はペロン党(正義党)内ではメネム元大統領(任期1989~99年)のネオリベラリズムにくみしない中道左派に属する。アルゼンチンでは軍事政権時代(76~83年)以来、経済情勢が悪化していたが、民政移管後も改善せず、とくにペロン党のメネム政権末期からはインフレ高進、対外債務の返済不履行など経済危機は深刻化し、政情も安定しなかった。これに対し、ネストル・キルチネル前政権は国際通貨基金(IMF)等国際金融機関と粘り強い条件闘争を行って債務問題を解決し、財政を立て直した。また、賃金や年金の引き上げ、軍事政権下で人権侵害事件を起こした軍人に対する恩赦法の廃止など、民政移管後の歴代政権の政策を方向転換した。フェルナンデス第一次政権もこの政策を踏襲した。その結果、経済成長は軌道に乗ったが、2009年のインフレ率は前年同期比7~8%台、貧困層は31.2%、失業率も8.7%と、国民生活の改善は遅れている。第二次政権では欧州経済危機の影響で財政状況の悪化が予想され、経済刺激策や社会支出などの削減、公共料金の引き上げ等は不可避と見られ、難しい政治経済運営を迫られる。