人民主義ともいう。大衆迎合主義、人気取り政策などの意味で使われることがあるが、ラテンアメリカでは別の意味で用いられる。大衆迎合主義に比較的近いのは、アルゼンチンのジェルマーニやディ・テラらの理論であり、伝統社会から近代社会への移行期においてカリスマ的指導者が未成熟な大衆を扇動・動員して独裁政権を維持した体制であるとする。典型的例としてアルゼンチンのペロン政権(1946~55年)が挙げられている。これに対し広く受け入れられているのは、同じくペロン政権の研究をもとにした、アルゼンチンのイアンニの理論である。寡頭地主制を基盤とする一次産品の輸出経済体制から輸入代替工業体制への転換期に成立する体制と捉えるもので、この理論によればブラジルのバルガス体制(1930~54年)やメキシコのPRI(制度的革命党)体制、その他、20世紀の民族主義政権の多くがこの中に含まれる。すなわち、ポピュリズムとは、大地主などの寡頭支配層を除く、資本家、労働者、中間層、その他の下層大衆から成る広範な「人民(pueblo)」ブロックを基盤とする体制と解することができる。この意味では今日のベネズエラのチャベス政権、ボリビアのモラレス政権など、新自由主義体制のもとで社会から排除された広範な下層大衆を基盤とする政権もこの範疇に含めることができる。