カリブ海のハイチのミシェル・ジョゼフ・マルテリー大統領を首班とする現政権(2011年5月成立)。マルテリーは同国で有名なポップ・ミュージシャンである。ハイチはラテンアメリカでもっとも早い1804年に黒人奴隷の反乱によりフランスから独立した。しかし、独立後も経済は衰退し、独裁政権が続くなど、政情は安定しなかった。デュバリエ父子(フランソワ・デュバリエ、ジャン=クロード・デュバリエ)独裁時代(1958~86年)にはトントンマクートと呼ばれる武装集団を利用した恐怖政治が行われた。90年には首都のスラム街の「解放の神学」派神父アリスティドが大統領に就任し、歴史上初めて改革の進展が期待されたが、クーデターによる追放や政権復帰が繰り返され、成果は上がらなかった。治安も悪化し、国連は2004年からハイチ安定化ミッション(MINUSTAH)を派遣している。10年11月の大統領・国会議員選挙では、不正があったとして暴動が発生。これに対し、ハイチ臨時選挙評議会は第1次投票で2位だった与党候補セレスタンを落選としたため、3月20日に第1位のマニガと第3位のマルテリーとの間で決選投票が行われ、マルテリーが67.6%の得票で当選した。新大統領は治安の回復を最優先課題に掲げ、1995年にアリスティドにより廃止された独裁時代の軍隊の復活を目指すとともに、デュバリエ独裁時代の政治家や、2011年1月にフランスから25年ぶりに帰国したジャン=クロード・デュバリエの子息などを側近や閣僚に起用している。