2012年6月22日にパラグアイ共和国のフェルナンド・ルゴ大統領が、任期を1年あまり残し、議会(正式名称はパラグアイ立法府)による弾劾で罷免(ひめん)された。その直接の契機は、同月15日にカニンデジュ県クルグアトゥ市において勃発した、土地なし農民運動と警察特殊部隊との衝突で17人の死者がでた事件であった。パラグアイでは、旧独裁体制下において富裕層による土地の大規模買収が進んだことから、体制転換後、土地の分配を求めて農民が蜂起し、大土地所有者の私有地をたびたび占拠する事件が起きていた。また、08年に誕生したルゴ政権は、農地改革を主要公約として掲げ、これら土地なし農民から支持を得ていたが、 議会の抵抗によりその実現が困難であったことから、全国各地で農民の実力行使による大土地占拠が散発していた。12年6月21日、事件への対応の責任を問う形で、議会多数を占める野党(コロラド党)および一部与党(真正急進自由党)の議員らが、大統領に対する弾劾裁判の実施を採決に付し、賛成多数で可決した(80議席中、賛成76票)。そして極めて短時間の審理を経て、翌22日には大統領の罷免が可決され、真正急進自由党所属のフランコ副大統領が大統領に昇格した。ルゴ大統領に対する罷免が決定した直後、議会に対し、大統領側近や支持者らによる抗議活動が散発したものの、いずれも警察との衝突には発展せず、国内的には大きな混乱は生じなかった。一方周辺諸国は、大統領側に十分な証拠収集と弁護の時間を与えていないなど弾劾裁判の審理に疑義があるとして、同月末に開催されたメルコスル首脳会合、および、南米諸国連合臨時首脳会合などで、両関連会合へのパラグアイの参加を一時的に停止した。また米州機構においても、同趣旨にて、パラグアイに対する制裁措置について議論されたが、8月22日の常設理事会で制裁決議が採択されることはなかった。なお、当初の予定通り、次期大統領選挙は13年4月21日に実施されることになっている。