2012年10月7日に実施されたベネズエラ大統領選挙において現職のウゴ・チャベスが勝利した。チャベスにとって、今回の選挙は1998年、2000年、06年に次いで4選目をめざす選挙であり、この勝利により、チャベス政権が19年まで存続することが確定した(通算で20年在任)。治安の悪化、インフレと品不足、電力危機、公的機関の機能低下といった経済・社会問題の深刻化だけでなく、チャベス自身の健康問題により、当初は、現職にとってこれまで経験した3度の大統領選と比較して最も厳しいものとなるだろうとの予想が大半であった。しかし実際は、チャベスが55.25%、反チャベス派の統一候補で、ミランダ州元知事のエンリケ・カプリレスが44.13%と、大統領側が10ポイントの差をつけて勝利した。アジア経済研究所の坂口安紀によれば、勝因として、低所得者向けの教育や医療の拡充、住宅建設、職業訓練といった従来の社会開発プログラムの実績に加え、選挙前に打ち出された大規模プロジェクト(貧困家庭向けの住宅供給や高齢者向け年金補助など)や公的機関や国営企業の新設による政府雇用の増大、現職に有利な選挙キャンペーンの展開と政府による動員などの理由が指摘されていた。しかし、チェベスの病状が回復しないことから13年1月10日に予定されていた大統領就任式は延期され、療養先のキューバから帰国してまもない3月5日、呼吸器系の感染症によりチャベスは死去した(享年58歳)。チャベスの死去にともない暫定大統領に就任したマドゥロ副大統領は、憲法規定に則り、4月14日に大統領選挙を実施することを発表した。現時点では予断を許さないが、12年10月で善戦した野党連合の結束に陰りが見えてきているとされる一方、チャベス死去による同情的な空気によりマドゥロが有利に選挙戦を展開するのではとの観測が流れている。