2013年3月5日にウーゴ・チャベス大統領が逝去したのに伴い、副大統領であったマドゥロが暫定大統領に昇格した。同年4月14日の大統領選挙では、チャベスの偶像を頼りとしつつ、その路線継承を訴えた。マドゥロにとっての最大の敵は、12年10月の大統領選でチャベス相手に惜敗した反チャベス派の統一候補カプリレスであった。選挙ではマドゥロが勝利したものの、得票数で約22万票、得票率では1.5%弱という小差での辛勝であった。選挙からわずか5日後に晴れて正大統領に就任(任期5年)したマドゥロは、前任のチャベスに比べ、カリスマ性やリーダーシップが大きく欠ける。また、長期間外務大臣を務めたことが裏目に出て、与党内およびチャベス派の市民のあいだにも確固たる支持基盤を持たない。いわば「チャベスによって後継指名された」という正統性のみが、ほとんど唯一彼を支えるものである。マドゥロ政権は、高いインフレ率、食品や生活必需品の不足とそれによる国民の不満の鬱積(うっせき)、製造業や石油産業の停滞、財政赤字や国内外債務の肥大化などの諸問題に直面している。ところが、大統領の支持基盤の弱さや、与党内の派閥争いによる政策ビジョンの一貫性の欠如が、問題解決に有効な手段を打てなくしている。このように政権内部の軋轢(あつれき)や経済・社会問題に対処する一方で、チャベスの死により勢いづく野党勢力にも対峙(たいじ)しなければならないという「内憂外患」を抱えつつ、現マドゥロ政権は、極めて困難な政治のかじ取りを迫られている。