2011年4月、ペルー、メキシコ、コロンビア、チリ4カ国の首脳によって、ペルーのリマで同盟設立への合意がなされ、翌12年6月に統合の骨格を定めた枠組み協定が締結された。また、14年2月には同盟国間を行き来する約9割の輸入品関税の即時撤廃を規定した追加議定書が署名され、予想以上のスピードで同盟の実質化が進められている。この同盟の目的は、加盟国間で財、サービス、資本、人の流れをいっそう自由化し、成長・発展・競争を促進する一方、とくにアジア太平洋地域との政治経済的な関係を強化することにある。もともとこれら4カ国(人口計約2億1200万)は、ラテンアメリカ地域の中でもとくに開放的な経済政策を推進し「経済の優等生」とされてきた国々であり、GDP(国内総生産)は地域の36%、貿易は50%、外国直接投資では41%を占める。なお、この同盟への正式加盟には、現加盟国すべてとのFTA(自由貿易協定)の締結が必須条件であり、15年2月時点で「加盟候補国」として参加するパナマやコスタリカも、上記の国々との二国間FTAが締結された段階で正式加盟することになる。また、これら2カ国以外にも、日本、中国、韓国、アメリカなど世界約30カ国の国々がオブザーバーとして参加している。従来のラテンアメリカ地域における「域内統合」が内向き志向であったのに対して、太平洋同盟は、世界の成長センターと目されるアジア・太平洋諸国との連携を見据えた外向き志向が強い。また、経済の活性化に主眼を置いたプラグマティック(実利的)な志向も併せ持つために、今後のラテンアメリカ地域における新しい「統合」の在り方をうかがい知るうえで非常に示唆に富んだ例とされている。