メドベージェフ大統領が2009年秋から唱道している主張であり、スローガン。08~09年にロシアを襲った、他国に比べいっそう深刻な経済危機によって自覚させられることとなった、現ロシアの諸欠陥を矯正しようとする試みである。従来のプーチン路線を踏襲するだけでは、ロシアの発展が保障されないことを示唆(しさ)する。具体的には、同大統領が09年の9月、11月にそれぞれ発表した「ロシアよ、進め!」論文と第2回教書演説のなかで提唱された。「近代化」スローガンは、ウラジスラフ・スルコフ大統領府第1副長官(当時)によれば、「現代化」と「未来化」の二つの契機から成り立つ。前者は、ロシア経済を西欧先進資本主義諸国並みの現代的水準にまで引き上げること。後者は、ロシア国民間にイノベーション(技術革新)の気風を作り出し、西側諸国を追い越すこと。プーチン首相はメドベージェフ大統領の説く「近代化」路線それ自体には反対していないが、「近代化」という言葉よりも「工業化」もしくは「イノベーション」を多用している。とくに経済の近代化が政治の近代化にも及び、同首相や側近たちがよって立つ資源エネルギー産業の運営にも影響してくる場合には、同首相はその展開に抵抗するケースが予想される。