ロシア経済は2009年のマイナス成長以来、BRICS諸国のなかでも鈍化傾向にあった。2014年に始まったウクライナ危機の展開は、ロシア経済に多大な影響を与えた。欧米諸国との関係悪化を懸念して資本流出が進み、投資・個人消費も急速に冷え込んだ。14年3月以降、日本を含むG7諸国やEU(欧州連合)は、ウクライナに対してロシアが進める「力による現状変更」や、事態の鎮静化に向けた姿勢の欠如を根拠に、ロシア政府要人の渡航制限・資産凍結など段階的に制裁を強化。特に、同年7月16日にアメリカが実施した制裁強化(ロシア国営石油会社ロスネフチなど大手エネルギー企業2社と銀行2社への制裁拡大、ロシアの軍需企業とアメリカ企業との接触禁止など)や、マレーシア航空機撃墜事故(7月17日)に伴うアメリカ・EUによる追加制裁(7月末)以降、制裁の実効性が高まった。さらに8月以降、シェール革命によるアメリカ国内の原油増産と需給緩和や、OPEC総会による原油減産見送り決定が影響して原油価格が急落。世界第2位の原油産出国であるロシアにも波及し、ルーブルの対ドル相場は14年3月中旬に約5年ぶりに最安値を更新し、その後一時回復するが、8月末以降下落が加速化。再三の市場介入にもかかわらず、14年1月には1ドル=約33ルーブルであったが、15年1月には1ドル=約65ルーブルと、1年間で50%近く下落した。