2014年春以降、ウクライナ東部を中心に活動をしていた親ロシア派武装勢力が、ウクライナからの自立をめざし自称した政治主体・非承認国家。継続的に活動しているものとしては、ルガンスク(同年4月28日独立宣言)およびドネツク(同年5月12日独立宣言)の両州に発生した「人民共和国」がある。名称はソビエト連邦(ソ連)期に肯定的に捉えられた国家形態を彷彿とさせた。同じく親ロシアの非承認国家で、グルジア(現・ジョージア)からの分離独立を主張する南オセチア共和国はこの二つの「人民共和国」を承認(同年6月27日)。このほか、ハリコフやオデッサなどでも極めて短期間ないしサイバー上のみの活動を行った「人民共和国」もあった。同年9月に署名された停戦合意文書であるミンスク議定書により「特別な地位」(時限的な自治)を認められたものの、その後もウクライナ側の事実上の攻撃によりルガンスクやドネツクの状況も一進一退。ロシアの民族主義勢力と公然と連携している一方、内紛も頻繁に発生しているとみられ安定的ではない。同年11月2日、この二つの「人民共和国」は首長ならびに議会選挙を実施したものの、国際社会はこれを無効と批判した。