朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)はロシアにとってほぼ無価値な経済的パートナーである。ロシアの大韓民国(韓国)との貿易額が年間250億ドル超であるのに対し、北朝鮮とはかろうじて1億ドルを超える取り引きを行っているに過ぎない(いずれも2013年、ロシア連邦関税局による数字)。他方で、ロシアは地政学的に枢要な場所を占め、また、核兵器開発を進めている北朝鮮に対して、一定の政治的影響力を保持し続けようとしている。晩年の金正日総書記のロシア訪問(11年8月)をはじめとして要人の往来が相次ぎ、韓国までの天然ガス・パイプライン敷設問題が協議された。13年9月には北朝鮮の羅先とロシアのハサンとを結ぶ鉄道が改修され、新線の開通式が行われた。同年11月にはロ朝間の鉄道事業に韓国企業が参加すると表明するなど、大陸と朝鮮半島の物流をめぐる関係に変化が生じている。14年4月、トルトネフ副首相(極東担当)の平壌訪問にあわせ、ロシア議会は北朝鮮の対ロ債務減免条約を批准。ロシアによる北朝鮮への政治的接近は、ロシアのアジア・シフト政策の一環といえる。(→「ロ朝友好善隣協力条約」)