2015年2月27日、ロシアのリベラル派野党指導者ボリス・ネムツォフ(1959年生まれ)が暗殺された事件。同氏は、1990年代、若手改革派政治家として頭角を現し、エリツィン政権下でニジニ・ノヴゴロド州知事(91~97年)、第一副首相(97~98年)などを歴任。しかし、プーチン政権下では自ら代表となったリベラル派野党の党勢拡大に失敗し、次第に政治家としての影響力は低下していった。暗殺当時はヤロスラフ州議会議員の任についていたほか、ロシア共和党・自由国民党共同党首など反プーチン勢力の結集に注力していた(→「反プーチン集会」)。暗殺事件は、モスクワ市内、赤の広場近くのレストランでの食事後、午後11時半過ぎ、20代のウクライナ国籍の恋人とモスクワ川の橋を歩いていた時に背後から銃撃されたもの。プーチン政権や警察当局は事件の真相解明に努めることを表明し、過激主義思想の影響を受けたチェチェン人治安部隊元幹部らを容疑者として逮捕・追訴したが、政権に近い位置にある黒幕の存在も指摘されている。事件の2日後、モスクワをはじめ旧ソビエト連邦(ソ連)各地で大規模な追悼集会が開かれた。その後も毎年事件の日付に追悼集会が開かれているが、野党勢力の現状を反映して年々低調になっている。