2015年10月11日、任期満了に伴うベラルーシ大統領選挙で、現職のアレクサンドル・ルカシェンコが5選目を果たした。同国憲法では、既に大統領の多選禁止規定はなくなっており、表向き4人の立候補者による選挙戦が繰り広げられた。しかし、現行の選挙法で認められる表現・集会の自由は限定的であり、ルカシェンコを事実上批判した候補者は1人にとどまった。ルカシェンコの得票率は83.47%にのぼり、無風選挙であったとされる。しかし、欧州安全保障協力機構(OSCE)や欧州評議会など国際機関が編成した選挙監視団からは、投票所スタッフや地区選挙管理委員会による多数の監視活動妨害や、開票作業での公正さや透明性の欠如が指摘された。野党勢力によるルカシェンコ批判は、さまざまな制約が課されているとはいえ、選挙後も散発している。今後、ロシアの経済不振に連動してベラルーシ経済の低迷が続くなど複合的な要因によって、反政府運動が興隆し、国内が不安定化する可能性を否定することはできない。また、対外的には、今回の大統領選挙は、欧州諸国との関係改善の契機にもなった。選挙終了後の10月末からは、それまで課していた大統領を含む政府・財界要人など170人に対する資産凍結および欧州連合(EU)への渡航禁止、さらにベラルーシ企業3社に対する資産凍結措置が停止された。16年3月には、EUは対ベラルーシ経済制裁そのものを撤廃。ベラルーシはEU東方パートナーシップに積極参加する方針に転じ、EUとの人権対話も再開している。ベラルーシは政治体制や対外政策の転換期に差しかかっているといえよう(→「ルカシェンコ4選」)。