1987年12月、アメリカとソ連の間に調印された条約で、両国の射程500kmから5500kmまでの中射程および短射程ミサイルを全廃するというもの。ヨーロッパの通常戦力を制限する欧州通常戦力条約(CFE条約)と並んで、冷戦を終結させる際の基本となった軍縮条約である。2001年5月、廃棄の査察が完了している。ところが、06年夏よりロシアは再三にわたってこの条約からの脱退を示唆してきた。とくに07年2月からは脱退を示唆する発言がプーチン大統領(当時)や高官から頻繁になされるようになった。背景には、アメリカがポーランドとチェコを対象にしたミサイル防衛(MD)システムの配備計画を進めていたことや、09年に失効する戦略兵器削減条約(START)の後継条約の交渉にアメリカが応じていない、ということがあったと考えられる。また、ロシア周辺国の多くが、中射程ミサイルを保有するようになった、ということもある。07年10月、ロシアのプーチン大統領(当時)は、同条約を二国間から多国間条約にすべきだ、との考えを明らかにした。