2016年12月4日に行われた選挙。親EU派のアレクサンダー・ファン・デア・ベレンが勝利した。今回の選挙は、同年5月に行われた大統領選決選投票が、郵送票の開票に問題があったとして無効となり、やり直しとなったもの。親EU派「緑の党」の支援を受けるが無所属で出馬したファン・デア・ベレン元党首と、反移民を掲げる極右政党「自由党」のノルベルト・ホーファー党首との対決となり、同日行われた憲法改正を問うイタリア国民投票とともに、ヨーロッパ中の注目を集めた。5月の時点でもファン・デア・ベレンが0.7%の僅差ではあれ勝利していたが、再投票では同氏が53.3%、ホーファーが46.7%(出口調査)と、むしろ差を広げての勝利となった。オーストリアの大統領職は儀礼的なポストで政治的権限は小さいが、ポピュリズムによるEU否定の波が広がることを懸念していたEU首脳は、一様に選挙結果を歓迎している。しかし、長く二大政党を担ってきた中道右派の国民党や中道左派の社会民主党といった既成政党の衰退は明白で、18年9月までに実施される次期総選挙では、世論調査で支持率1位の自由党が連立政権に加わる可能性は高いと言われる。