2016年12月4日に実施された国民投票。イタリア上院の権限を縮小するための憲法改正を問うものだった。事実上、マッテオ・レンツィ首相の信任投票となったが、投票率は65.47%と高く、結果は賛成40.89%、反対59.11%となった。これを受けて、レンツィ首相は辞任。同月12日、前外相のパオロ・ジェンティローニによる新内閣が発足したが、総選挙までの暫定内閣と見られている。そもそもレンツィ首相が求めたのは、議会審議のスピードを上げること。それによって、迅速な財政改革を進めようとしたのだ。1948年に制定された現行憲法では、ファシスト政権への反省から政党の暴走を防ぐため、上院と下院がまったく対等な力を持っている。そこで、上院の権限を大幅に下げ、下院の議事運営の効率を上げることが課題とされた。今回の国民投票で問われた憲法改正は、上院に関するもので、(1)上院の議席数を3分の2以上削減して315から100とする、(2)上院議員は直接選挙による選出ではなく、地方自治体の代表等で構成する、(3)内閣不信任権を持つのは下院のみ、などを内容としていた。下院に関しては2016年7月施行の新選挙法(Italicum)により、比例代表で40%以上の票を獲得した第1党に全630議席のうち54%にあたる340議席を自動的に与えるという制度に改正されている。今回憲法改正が可決していたら、下院の優位が確定し、むしろ五つ星運動(5SM)のような反移民、反EUを掲げるポピュリズム政党が政権を取る可能性が高まるとの懸念もあった。レンツィ首相の退陣によって、今後総選挙の早期実施は避けられず、結果いかんによってはイギリスのEU離脱に続いてイタリアでも同様の国民投票が実施されるのでは、との不安が世界に広まっている。