中東諸国が人口増加および経済発展にともなう水、電力の供給不足を補い、エネルギーの多様化を図る目的で核エネルギー開発を推進する動き。中東諸国の核開発計画は、(1)イランの核開発問題、(2)環境問題への対応、(3)石油資源の枯渇問題、(4)欧米の原子力開発の活発化、などに刺激され、関心が高まっている。その一方、中東地域の特色として水問題と電力需要の高まりがある。中東では利用できる水の量は1人当たり年平均1200t(世界の平均8900t)で、これが2050年には約半分(世界は6000t)となる。また、中東の水資源である河川水はいくつかの国内を流れるもので、上流諸国の影響を受けやすい。このことから、紛争予防と水の需要をまかなう上で、淡水化と組み合わせた原子力発電が注目されている。また、都市化や、工業、観光産業が育成され各国の1人当たりの年間電力消費は1980~2003年で各国平均2~3倍となっている。この傾向も各国の政策立案者にとって大きな要因であった。中でも原子力発電所設置に向けて積極的な動きをしている国としては、08年では、トルコ、エジプト、湾岸協力会議(GCC)諸国が挙げられる。この動きに対し、フランス、ロシア、アメリカ、イギリスが開発協力の姿勢を強く示している。特にフランスのサルコジ大統領は、原子力開発を1つの外交テーマとしてアプローチしている。またロシアの動向も注目され、イランでのブシェール原発の建設継続に加え、08年9月にはトルコの原発に唯一応札を行った。GCC諸国の一部の国は、08年に原子力開発計画における協力協定をフランス、アメリカと締結、11月にはイランが同諸国に共同建設を提案する動きも見られた。09年4月に日本とヨルダンの原子力開発に関する協力覚書、12月の韓国、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設契約の調印など、北東アジア諸国の活躍が見られている。なお、08年11月にアメリカの「科学国際安全保障研究所」(ISIS)が、中東地域の計画中の原発により出される使用済み燃料から生成できるプルトニウム量を試算した。それによると、2020年には13tに達し、核弾頭約1700発をつくれることになる。