2015年7月に、P5+1(国連安保理常任理事国5カ国とドイツ)とイランが合意した、イランの核開発に関する取り決め。正式には「包括的共同行動計画(JCPOA)」合意。イランは8~15年間にわたるウラン濃縮関連活動の制限や、最大で25年間に及ぶ国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れ、核兵器の起爆装置の開発につながるような活動にも従事しないことなどに同意し、その見返りに国連などの対イラン経済制裁を解除する、というのが主な合意の内容。合意に到る経緯を述べると、まず02年にイランが秘密裏に核開発をしていることが明らかになり、国際社会は懸念を深めた(→「イランの核兵器開発疑惑」)。イランは、核兵器を作る意思はないと主張したが、国際社会における疑惑は消えず、06年から数度にわたって国連による対イラン経済制裁が実施された。アメリカは長年イランに対して強硬姿勢をとってきたが、オバマ大統領は09年の就任直後には、イランとの対話姿勢を表明した(ただし11年には追加制裁を実施)。イラン側では、13年8月に保守穏健派で改革派のロウハニが大統領に就任したことで交渉が進展した。JCPOAを国連安保理が15年7月20日に承認し、16年1月16日から合意の履行が開始された。国連などによる核関連の経済制裁は解除されたが、テロや人権侵害、ミサイルに対するアメリカの経済制裁は残っていることなどから、イランが期待したほど経済状況は改善せず、イラン側が不満を強めている。一方、17年1月に就任したトランプ・アメリカ大統領は、イランとの合意撤回を主張しているが、アメリカ以外の国は合意継続の立場である。