南アフリカのアパルトヘイト廃止後最初の大統領となったマンデラの後を引き継ぎ、2期目を迎えていたムベキ大統領が、2008年9月、翌年4月の任期満了を待たずに辞任した。ジェイコブ・ズマ元副大統領が、07年12月に開かれた与党アフリカ民族会議(ANC)党大会でムベキを破ってANCの新議長となって以来、ムベキのリーダーシップが問われていた。ズマは、ズールー出身で、05年に汚職疑惑によって副大統領職を解かれて以来、ムベキとの関係は極めて悪化していた。辞任したムベキ大統領の後任には、ANC副議長のモトランテが09年4月までの暫定大統領として就任した。ムベキ辞任の背景には、比較的高い経済成長にもかかわらず著しく改善しなかった格差や、若者を中心とする高い失業率に対する、ANC傘下の労組や共産党などによる批判の高まりがある。09年4月の総選挙では、ANCが勝利し、5月にはズマ議長が大統領に選出された。しかしムベキ辞任を不服とするANC幹部が08年12月、新党「国民会議(COPE)」を旗揚げするなど、アパルトヘイト期から一体を保ってきたANCの基盤は、必ずしも強固ではなくなってきた。南アフリカは、10年7月、アフリカで初となるサッカーワールドカップ大会を開催し、無事終了した。