ジョージア(旧称グルジア。→「グルジア呼称問題」)西部に位置する地域。黒海沿岸に位置し、ソ連時代は保養地として人気があった。ロシア革命後、ロシア領内の自治共和国と位置づけられたが、ソ連邦成立時にジョージアに編入。首都はスフミ。人口50万人強に過ぎないこの地域では、複雑な歴史的経緯を背景に、ジョージア人と現地民族アブハズ人(イスラム教徒)との対立が深刻である。ジョージア人の入植が進み、文化・教育政策の「ジョージア化」に危機感を募らせたアブハズ人は、1950年代から、モスクワの党中央への請願という形で分離運動を進めた。89年、高等教育のさらなる「ジョージア化」をきっかけに、アブハズ人とジョージア人が衝突(スフミ事件)。92年7月、「共和国」宣言。ジョージア政府がこれに反発し、スフミを攻撃・制圧。93年7月および94年5月の停戦協定によって、国連ならびに独立国家共同体(CIS)によるPKOが派遣され、事態は鎮静化した。他方、軍事的膠着(こうちゃく)状態が続き、経済は停滞している。住民の約8割がロシアの旅券を所持し、ロシアへの労働移民が増加傾向にあるなど、ロシアへの依存体質が高まっている。事実上、アブハジアはジョージア政府の管轄が及ばず、大統領制による独自の政府が運営されている。停戦合意は順守されているものの、98年以後も散発的に武力衝突が発生。2006年6月14日、スフミにて南オセチアおよび沿ドニエストル共和国との「首脳会合」を実施し、未承認国家による「民主主義・諸民族の権利のための共同体」設立を宣言した。08年8月26日、ロシアが国家承認。