近年のアフガニスタンにとって最大の懸案は、国内治安の悪化である。2000年代半ばには年率10%台、10年には同8.2%の国内総生産(GDP)の成長がみられ(アメリカCIA推計、以下同)、首都カブールを中心に経済復興は進んでいるとみられるが、貧困率(36%、08~09財政年度)や失業率(35%、08年推計)は改善傾向にあるとはいえ依然高い。加えて、パキスタンとの国境地域や南部に拠点を置くタリバンの勢力が00年代後半期を通じ全国化し、反政府の地方勢力とともに事実上の複数権力状態に陥っている地域が国土の大半を占めているとみられる。国民の大半は生活を維持するため、中央政府以外のこれらの権威に依存せざるを得ず、カルザイ政権への不満につながっている。中央政府は国際治安支援部隊(ISAF)の助けを受け、国軍や警察機構を訓練・整備し全国に配備するが、当初の展開目標に及ばない状態が続く。11年7月より、ISAFからアフガン側への治安権限移譲が段階的に開始。他方で、カブールを含めタリバン側の武力攻撃などのテロ行為は、10年で対前年比56%増(アメリカ国務省調べ)と増加傾向にある。11年にはカルザイ大統領の実弟(7月12日)、ラバニ元大統領(9月20日)など要人の暗殺も相次いだ。
併せて、政権内の汚職・不正の蔓延(まんえん)が、カルザイ政権に対する不信につながっている。09年11月19日、再選されたカルザイ大統領は所信表明でそれらの根絶を約束したが、前途は多難である(→「アフガニスタン大統領選挙(2009年)」)。10年1月2日、議会は再選後のカルザイ大統領が指名した閣僚候補24人中17人を不信任とした。同年9月に実施された下院選挙では、大規模な不正行為が指摘され、大統領主導で62人の当選取り消しが決定されるなど混乱が続く。