カスピ海に面したカフカス東部の共和国。旧ソビエト連邦(ソ連)構成国の一つ。首都はバクー。人口は約950万人(2014年、国連人口基金)。住民の大多数はテュルク系のアゼルバイジャン人で、その多くがイスラム教シーア派。領内の旧ナゴルノ・カラバフ自治州(住民の8 割弱がアルメニア人)の帰属をめぐってアルメニアとの間に紛争を抱える。1991年にソ連から独立後、93年よりヘイダル・アリエフ大統領による権威主義体制が整えられ、2003年10月の大統領選で彼の息子イルハム・アリエフが当選。旧ソ連構成国初の権力の世襲が実現した。野党は活動を制約され、議会では与党系議員が圧倒的多数を占めているが、野党の活動自体は活発である。09年には大統領の3選禁止規定が憲法から外され、16年には副大統領職設置を含む憲法改正で強権的な体制が強化された。首都バクーはロシア帝政期から石油開発が盛んであり、20世紀初めには外国資本や国内外の出稼ぎ労働者が集まる国際都市となった。カスピ海と地中海をつなぐBTCパイプラインの起点に位置し、外国からの石油・天然ガス開発関連の直接投資を背景に、21世紀に入ってから驚異的な経済成長率を示したが、一方で石油価格の動向に経済が左右される脆弱性が強まった。石油供給元としてアメリカと、また、ロシアとも良好な関係を維持する外交政策を採る。