2001年6月に、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、中国、ロシアの6カ国で設立された地域機構。1996年にウズベキスタンを除く5カ国の首脳会談として始まった上海ファイブを前身とする。上海ファイブは、中国と国境を接する国々の、国境地域の安全を保障し、軍事部門での信頼を醸成することで、旧ソビエト連邦(ソ連)の解体によって生じた中央アジア地域での不安定要因(国際テロリズム、イスラム過激派、民族分離主義など)を除去することを目指していた。上海協力機構では、テロ対策などの安全保障面での協力を中心に据えつつ、中国が主唱する加盟国間の経済協力の推進も課題となった。しかし、ロシアは旧ソ連の複数の国々が加盟するユーラシア経済共同体(現・ユーラシア経済連合)を主導しており、上海協力機構の枠内での経済協力には慎重だった。中央アジア諸国からすると、中国との経済協力の深化を歓迎する一方で、大量の労働力の流入を伴うような過剰な中国の経済進出を警戒する世論は根強く、ロシアと中国との影響力のバランスを取る場として上海協力機構を捉えてきた。このように、安全保障面や文化交流の面で一定の成果を上げてきたものの、加盟国間の思惑の相違から、地域機構としての新たなアイデンティティは定まっていない。また、モンゴル(04年)、インド、パキスタン、イラン(05年)、アフガニスタン(12年)、ベラルーシ(15年)がオブザーバーの地位を得ており、この他に対話パートナー(6カ国)も存在する。多くのオブザーバーと対話パートナーの国々が正式加盟を目指してきたが、ようやく15年7月の首脳会合でインド、パキスタンのみ正式加盟が認められた(17年正式加盟予定)。南アジアや中東にまで機構の地理的範囲が拡大することで、機構の性質も変容する可能性がある。