アフガニスタンの中央高地に集住する同国の少数民族。人口の約1割を占める。アフガニスタンの中心民族であるパシュトゥン人がイスラム教スンニ派を信仰するのに対し、ハザラ人はシーア派を信仰している。外見上も同国内の他民族と異なりモンゴロイド的な要素が強く、長いこと差別対象となってきた。2001年にタリバンが爆破したことで知られる世界遺産のバーミヤンの磨崖仏(まがいぶつ)があるのは、ハザラ人の集住地域である。ハザラ人は、イラン語派西イラン語群に属するダリー語の方言とされるハザラ語を母語とし、言語的には同国北東部に集住するタジク人に近い(パシュトゥン語は同じイラン語派でも東イラン語群に属する)。1990年代のタリバン政権下では迫害の対象となり、地理的には隔絶しているものの、タジク人のマスードが率いる北部同盟の間接的な影響下にあった。近年のアフガニスタン国内に駐留する有志連合軍の規模縮小により、タリバンが分裂しつつも勢力を盛り返しており、さらに、新たに「イスラム国」(IS)も侵出してきたことで、シーア派少数民族であるハザラ人への迫害が危惧されている。2015年11月、アフガニスタン南部でハザラ人7人の斬首遺体が発見されたことに端を発し、首都カブールで数千人のハザラ人が治安改善とガニ大統領の退陣を求める抗議デモを実施。16年7月には、カブールでのハザラ人のデモに対して「イスラム国」の犯行による自爆テロが発生し、80人が死亡する事故が起きている。