自治体の財政力によって義務教育に格差が生じることのないように、公立小中学校の教職員給与の一定額を国が補助負担する仕組みで、従来は国と都道府県がそれぞれ2分の1を負担していた。2004年度より、人件費の枠内で同負担金をどう使うかは自治体に任せる総額裁量制が導入された。この制度により、全国どの地域でも一定数の教職員の配置が可能となっているが、小泉純一郎政権が進めた「三位一体改革」の一環として、国から地方に税源移譲する財源を捻出するために、従来の2分の1から3分の1に削減されることになり、04年度2.5兆円だった補助金額は06年度1兆6763億円となった。中教審は同負担金2分の1の堅持ないし全額国庫負担とすることを答申したが、政治決着により削減されることになった。国であれ都道府県であれ、金の出所が違うだけで実質的な違いはないと考えられがちだが、地方交付税も減額される傾向にあるから、財政力の弱い自治体で財源不足が生じる可能性が大きい。そうなれば、それらの自治体では教育予算が削減され、出身家庭や地域の経済力による教育機会の格差が拡大しかねない。適切な地方分権改革は必要だが、義務教育の基本的な枠組み設定と水準維持は国が担保すべきである。09年9月に鳩山由紀夫政権が発足し、政権政党となった民主党には、同負担金の増額や全額国庫負担化を進めるべきとの意見もあるが、09年末の「事業仕分け」では「見直し」との結論にとどまった。国も地方自治体も財政事情が厳しいことは周知のところだが、経済不況が続くなかで、義務教育段階でも教材費・給食費・修学旅行費用などを工面する余裕のない家庭が少なくないことを踏まえ、それらの経費を同負担金に組み込み全額国庫負担化すべきであるとの意見や、経済的事情で高校・大学への進学や学業継続を断念せざるを得ない子どもたちも少なくないことを踏まえ奨学金の拡充を早急に進めるべきとの意見も多い。