小・中・高校の教育課程に関して国が示す基準。文部科学省告示であるが、法的拘束力をもつとされる。1947年、最初の学習指導要領が試案として発行され、各学校が教育課程を編成する際の指針・手引きとされた。しかし58年の3回目の改訂(2回目の全面改訂)で文部省告示となり、法的拘束力が強調され、道徳の時間の新設や教科内容の現代化とともに戦後教育に大きな変更が加えられた。その後ほぼ10年ごとに全面改訂されてきたが、77年の改訂では受験競争の激化・受験苦自殺や落ちこぼれ等が問題視されるなかで、教育内容の精選やゆとりの時間(学校裁量時間)が導入された。89年の全面改訂では情報化・国際化等を背景に「教育の個性化と多様化」が掲げられ、小学校低学年での生活科の新設、中学校での選択履修幅の拡大、高校社会科の地理歴史と公民への再編、「日の丸」「君が代」を国旗・国歌として入学式や卒業式で掲揚・斉唱することの義務付け等が行われた。2002年からの学校五日制完全実施に伴い、「生きる力」の育成をスローガンに掲げ、授業時数・教育内容の大幅削減、「総合的な学習の時間」の創設、時間割の弾力的編成、必修クラブの廃止、高校での教科「情報」必修等を柱として大幅改訂が行われた。しかし「学力低下」論が強まるなかで03年12月には、同年10月の中教審答申を受け、(1)指導要領の(最低)基準性の明示(従来、各学年配当の教育内容を越える事項は扱わないとしてきた「歯止め規定」の廃止)、(2)子どもの学力に応じた習熟度別学習や補充的学習・発展的学習などの奨励、(3)教育内容の一部復活などを柱として、実施されたばかりの指導要領が一部改訂され、能力主義・学力重視への方針転換が明らかになった。さらに08年1月の中教審答申を受け、学習指導要領が改訂され、小学校は11年4月より、中学校は12年4月より実施されることになった。この改訂は、改正された教育基本法や学校教育法を踏まえて「生きる力」の理念の共有と「確かな学力の確立」をスローガンに掲げているが、具体的には、「総合的な学習の時間」の削減、数学・理科・体育・国語・社会・外国語などの授業時間数と教育内容の増加、小学校高学年での外国語活動(英語活動)の導入など、グローバル化や知識社会の進展に対応するための学力向上策と、道徳教育・体育や伝統文化教育の重視を特徴としている。