2009年9月に政権政党となった民主党がマニフェストに掲げた政策の一つ。「家庭の状況にかかわらず、全ての意志ある高校生等が安心して勉学に打ち込める社会をつくる」ことを目的として制定された「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(10年3月制定)と関連法令(同法施行令、施行規則、文科省政令・告示など)により、10年4月よりスタートした。高校だけでなく、高等学校の課程に類する課程を置く各種の学校で、修業年限3年以上、年間授業時数800時間以上、校地・校舎・設備、教員数などの基準を満たす国・公・私立の学校(例えば中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部、専修学校高等課程など)の生徒すべてが対象となる。民族系学校やインターナショナル・スクールなど各種学校とされている外国人学校の生徒も、学校が上記の基準を満たしており、かつ、大使館を通じて日本の高校相当の課程であること、ないし国際的な学校評価団体の認証を受けていることが確認されれば対象となる。なお、朝鮮学校についても民族系学校として基準を満たしていると確認されれば同様に対象となり、10年11月に起こった北朝鮮による延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件を考慮し、一時的に審査手続きが停止されていたが、11年8月に審査が再開されるに至った。この制度は、高校進学率が98%に達しているにもかかわらず、近年の経済・雇用環境の悪化などにより経済的理由で高校進学を断念する子どもや高校中退する生徒も増える傾向にあるなかで、基本的には好ましいと評価されている。その一方で、(1)財政事情が厳しいなかで教育予算を有効に使うためにも所得制限すべきである、(2)修学旅行費用や教材費、私立の入学金など授業料以外にも必要な経費が多く、それらの費用を負担できない場合も多いから、所得制限を行い、その分を経済的困難層の教育支援に充てるべきである、(3)所得制限して、その分を就学前教育や大学・高等教育の就学支援の拡充に充てるべきである、(4)私立高校の授業料等をすべてカバーできるわけでないから、公立志向が強まり、生徒集めに苦労する私立が増える可能性がある、(5)経済的に余裕のある家庭を中心に学習塾の費用などに充てることになれば、教育格差が拡大する、(6)事実上、教育バウチャー制と同じことになり、経済的に余裕のある中間層を中心に私立志向が増大し、入試競争の複雑化や教育格差の拡大の危険性がある、といった批判的意見もある。