生活困窮者に対し、憲法第25条で定める健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する公的扶助制度。社会保険など、生活困窮に陥らないようにする予防的な施策で防ぐことの出来なかった貧困を救済するセイフティネット(最後の安全網)の役割を果たす。生活に困窮するすべての者に無差別平等に、国が定める最低限度の生活が、本人の申請に基づいて扶助される。その際、申請者は、利用できる資産、能力、また親族からの支援、他の法律に定める給付なども活用した上で、なお不足する部分に限って扶助される。日常生活に必要な費用に対する生活扶助の基準額は、一般国民の消費実態と均衡が保たれるよう、一般世帯のうち収入が低い方から概ね10%に位置する世帯の消費水準に設定されている。水準均衡方式というこの扶助基準の決め方は、一般国民の生活が向上している時には扶助基準も年々引き上げられ、問題は少なかったが、今日のように、格差が広がって低所得者の生活が悪化するようになると、それに合わせて扶助基準の引き下げを求めることになり、国民の最低生活を守る砦としての役割が果たせない問題が生じている。扶助には、生活扶助の他にも、住宅費を支給する住宅扶助、義務教育の学用品費のための教育扶助、医療費のための医療扶助、介護費のための介護扶助、出産費のための出産扶助、技能習得費などのための生業扶助、葬祭費のための葬祭扶助がある。生活保護を受ける人の割合を示す保護率は、戦後の経済の発展に伴って1990年代半ばには0.7%程度にまで下がったが、その後の景気低迷で17%程度(2015年)にまで上昇している。とはいえ、西欧諸国と比べると非常に低い。これには、ミーンズテスト(→「公的扶助」)の厳しさや扶養義務者の範囲の広さなど、制度的な違いも影響している。