後期高齢者医療制度は、1990年代の中ごろからの長い議論の末に2008年度にようやくスタートした75歳以上の高齢者を対象とする医療制度であったが、制度変更で負担が増える高齢者らの反対が強く、09年に政権交代を果たした民主党を中心とする連立政権は、後期高齢者医療制度に代わる新しい医療制度を13年度に発足することを決定した。09年11月に厚生労働大臣が主宰して発足させた「高齢者医療制度改革会議」は10年12月に次のような内容の最終とりまとめを発表した。(1)75歳以上の高齢者も75歳未満と同じ制度に加入することとし、サラリーマンなどの被扶養者は被用者制度に、そうでない者は国民健康保険に加入する。(2)国民健康保険は都道府県による運営とし、市町村は保険料の賦課・徴収・資格管理、給付事務等を担当する。(3)その際13年度で75歳以上の財政運営を都道府県単位化し、18年度で国民健康保険加入者全員を対象に都道府県単位化をする。(4)75歳以上高齢者の給付費の費用負担は公費が5割、高齢者の保険料が1割、現役世代の支援金が4割とし、被用者保険が負担する支援金の負担には総報酬制を導入する。(5)65歳から74歳の年齢層の医療費はこれまでの納付金を残して制度間の財政調整をする、などである。後期高齢者医療制度の狙いの一つは、増加する医療費を高齢者にも相応に負担してもらうことであったが、制度の廃止で高齢者の負担等については基本的に08年までの状態にもどることになった。また年齢で制度を分けることに対する批判から、高齢者は08年までと同様一般の制度に加入することになったが、高齢者の医療費の負担についてはほぼ現行の枠組みを維持することになった。結局、今回の改革案は、今後も増加し続ける医療費をどう賄っていくのかの道筋を描けないままに終わっている。大きな変更点は国民健康保険の財政運営を都道府県に移行させようとしている点であるが、これは厳しい国民健康保険の財政を市町村から都道府県に置き換えるだけで、都道府県側からの反対も強く、実施の見通しは立っていない。