市町村が保険者(保険経営主体)となって、被用者保険(サラリーマンの健康保険組合や協会けんぽ、公務員の共済組合など)の適用からもれる、農林漁業者、自営業者、パートやアルバイトなどの非正規雇用者、退職者などを対象にした健康保険。略して、国保(こくほ)とも呼ばれる。医師や弁護士など地域の同業者が組合員となって国民健康保険を運営する国民健康保険組合もある。戦前から農村人口を対象に国民健康保険は実施されていたが、1958年に新国民健康保険法が制定され、61年より全国民にもれなく医療保険が適用、皆保険体制が実現した。被用者保険に加入している被保険者に比べて、国民健康保険に加入している被保険者は所得が十分でなく、給付に要する費用の半分は国が負担し、残りを被保険者から徴収する保険料で賄っている。国民健康保険の被保険者は当初、農林漁業者が中心であったが、その後、退職者が中心を占めるようになり、それが国保財政を悪化させたことから、被用者保険制度も含めた全制度で高齢者の医療を支える老人保健制度が83年に実施された。さらに2008年から後期高齢者医療制度(長寿医療制度)ができ、すべての75歳以上の高齢者はこの制度に加入することになり、国民健康保険の高齢者の比率は低下している。このような高齢者医療制度の改革にもかかわらず、非正規雇用の増加で収入の低い被保険者の割合が増え、国保の財政は依然として厳しく、これまでの市町村単位の不安定な保険財政を改め、国保を都道府県に移管する医療保険改革法が15年5月に成立した。これにより18年4月から国保は都道府県が運営することになった。移管後も、市町村は保険料の徴収や保健事業の実施などで、国保運営を支えることになる。