いずれも貧困をなくすことを目的とする社会保障制度。救貧制度は現に貧困にある者を救済する事後的な制度で、防貧制度は人々が貧困に陥らないようにその原因に備える予防的な制度である。救貧制度の代表例は公的扶助(生活保護)であり、防貧制度の代表例は、老齢、疾病、失業等による所得の喪失・中断に備えるためあらかじめ保険料を徴収する社会保険や、高齢者や児童など全対象者に対して税財源で一律に支払われる社会手当等がある。救貧制度は、貧しい人に絞って救済することから選別的な制度とも呼ばれ、防貧制度は、貧しい人だけでなくすべての人に普遍的に適用されるので普遍的な制度とも呼ばれる。防貧制度の方が救貧制度より給付費の規模は大きくなるので、アメリカのように社会保障の中で救貧制度の役割が大きい国では、全体としての社会保障給付費の規模は小さく、反対に欧州諸国のように防貧制度が完備している国では、救貧制度の規模は小さくなるが全体としての社会保障の規模は大きくなる。