社会的な交流が非常に乏しい高齢者の社会的孤立の問題は、社会の関心が介護問題に当てられてきた中で取り残されてきた。死後1週間、1カ月後に発見される孤立死は、ときおり新聞の片隅に載るが、それは高齢者の社会的孤立問題の氷山の一角に過ぎない。2007年に東京都板橋区で実施された約2900人のひとり暮らし高齢者を対象にした調査では、「直接会ったり電話や手紙でやりとりしている親しい人がまったくいない、またはいても月1回程度しか交流がない」という孤立状態にある人は、約11%であった。これは、同区のひとり暮らし高齢者のうちの2000~3000人に当たる。ひとり暮らし高齢者全体は女性が圧倒的に多いが、孤立状態にあるのは、男性が55.5%と過半数を占めた。また、孤立状態にある人の4割強が未婚者であった。孤立死や閉じこもりを防ぐための見守りや声かけの活動が、市町村・社会福祉協議会や地域の自治会などによってはじまっている。しかし、高齢者の社会的孤立問題に対しては、こうした事後的な対策だけでなく、高齢期に至る過程で孤立状態になる背景にある家族・職業・地域関係などの要因に即した広範な社会的施策が必要である。