介護報酬とは、介護保険の対象になる介護サービスを提供する事業者に支払われる報酬のことで、3年ごとに見直しが行われる。政府は2015年1月、介護保険事業者に支払われるサービスの対価としての介護報酬の総額について、15年度から2.27%引き下げる方針を固めた。介護報酬が引き下げられるのは06年以来9年ぶりである。この背景には、社会保障審議会の委員会が実施した調査で、施設系や訪問系など21通りの介護保険サービスのうち19のサービスで黒字を維持していることが示されたことがある。サービス現場には、報酬引き下げは事業経営を圧迫しサービス低下や職員削減などにつながるとの懸念の声がある。このため、消費税率を8%に引き上げたのに伴う財源を使って、労働環境の改善などの条件を満たした事業者に対して、廃止する予定だった「介護職員処遇改善加算」を存続させ、職員1人当たりの給与を月1万円から1万2000円に増額する。一方、社会保障制度審議会・介護給付費分科会は、上記の介護報酬改定に向けたサービスの運営基準などに関する諮問を行った。主なものは、次の通りである。(1)通所型および訪問型のリハビリテーションの基本方針として、「心身機能」「活動」「参加」といった生活機能の維持・向上を図るものでなければならないことを規定する。(2)小規模多機能型居宅介護について、利用者として登録できる定員を現在の「25人以下」から「29人以下」に緩和し、経営の安定化を図る。(3)短期入所生活介護(ショートステイ)における緊急時の受け入れを促進するため、利用者の状態や家屋などの事情によって、ケアマネジャーが「緊急止むを得ない」と認めるなどの一定の条件下で、専用の居室以外の静養室での受け入れを容認する。(3)いわゆる「お泊りデイ」を実施している事業所について、利用者保護の観点から、事業所の電話番号、宿泊サービスの利用定員や提供時間、宿泊サービスの人員配置、個室かどうかなどの宿泊室の状況、消防設備の設置状況などの届け出が、15年度から義務付けられる。